けみてつ欧州旅20 4,5日目 ギリシャブルガリア陸路国境越え

こんにちは、けみてつです。欧州旅まとめシリーズ第二弾は、ギリシャ・ブルガリア国境を陸路で越えた話。

前日、ペロポネソス半島・カラブリタの狭軌鉄道に乗った話はこちら

2020年2月21日

1.アテネ→テッサロニキ

狭軌鉄道に乗った翌日、午前中はアテネ市内を観光(この部分はいずれ記事にします)。昼過ぎにアテネ駅へ戻り、ホテルに預けておいた荷物を回収、駅内に入り列車を待つ。

アテネ駅
アテネ駅の駅前

乗車するのは、アテネ発テッサロニキ行きIC3500列車。金・土・月曜日のみ運行の臨時列車(2020年2月現在)で、途中の停車駅はラリッサ駅のみ、終点のテッサロニキ駅まで4時間強で走破する。編成は、Aクラス(1等車)2両、食堂車1両、Bクラス(2等車)3両を電気機関車が牽引する、7両編成。

IC3500列車
乗車したIC3500列車

発車の15分ほど前に列車が入線、乗車する。事前にギリシャ国鉄予約サイトからAクラス座席を確保しており、印刷しておいた紙が切符になるため、窓口に寄る必要は無い。なお、Aクラス車両には4人コンパートメントと6人コンパートメントの車両があり、私が予約したのは4人コンパートメントの車両。乗客は多く、車内はほぼ埋まっていた。

13時26分にアテネ駅を発車。昼飯をまだ食べていなかったため、食堂車に向かい軽食を購入。パサパサなターキーサンドイッチと砂糖マシマシコーヒー、合わせて€5。食堂車で食べようかとも思ったが、Bクラスの乗客も多く来ており、あまり快適な空間ではなかったため自席へ戻る。

軽食
食堂車で購入した軽食
車窓
ラミア付近を走行中の車窓(だった気がする)

アテネ駅を発って3時間弱でラリッサ駅に到着。アテネ駅はラリッサ駅とも呼ばれているが、この名前の由来になった都市でもある。私の居たコンパートメントは4席全て埋まっていたが、ここラリッサで3人下車し、貸切状態となった。

ラリッサ駅
ラリッサ駅
Aクラス車内
Aクラス、4人コンパートメント車両の車内

そしてラリッサ駅から更に1時間半ほど走り、列車はほぼ時刻通りにテッサロニキ駅へ到着した。

2.テッサロニキ

テッサロニキ駅切符売り場
テッサロニキ駅切符売り場 Internationalは2番窓口、英語が通じる。

テッサロニキ駅に到着してまずしたことは、翌日の切符の購入である。ギリシャのテッサロニキからブルガリアのソフィアへ行く列車は、早朝に1日1本のみ。逃すとその日はもう鉄道で国境を越えることができないため、切符の確保を優先した。なおテッサロニキ駅は、ホームが高架上にあり地下通路で結ばれている構造上、駅内が暗くなっている。切符売り場はまだ入口近くであり明るいが、あまり治安の良い場所ではなさそう。

時刻表は以下、ギリシャ国鉄サイト及びブルガリア国鉄サイトから確認できる。
International Railway Services  – TRAINOSE
Sofia – Thessaloniki – Sofia  – BDZ

そして、ここで購入したソフィアまでの切符がこちら↓

テッサロニキ~ソフィアの切符
テッサロニキからソフィアまでの切符

手書きである。まじか。そして3枚あるが、どれが何を意味しているのかわからない。切符の代金は一番上の紙に書いてあるとおり、€16.80。窓口の係員氏が台帳を持ってきて、色々書き込みながら発券するため、購入には少し時間がかかった。

切符を購入(列車があることを確認)した後は、ホテルに向かう。荷物を置き、夕飯を探しにホテルを出たところ、すぐ隣にあるレストラン店員と目が合い、手招きされた。ここで夕飯。

夕飯
ギリシャ風サラダとムサカ、チップ含め€15。

めしった後はすぐホテルへ戻り、翌日早朝の列車に乗り遅れないようさっさと寝た。

2020年2月22日

3.国境近くの駅、ストリモナス

先程テッサロニキからソフィアに行く列車は1日1本と述べたが、この表現はあまり正確ではない。ギリシャからの国際列車は現在(2020年2月時点)全て運休しており、ソフィア行きに関しては、国境区間をバスにより代行している。

テッサロニキ駅
早朝、まだ暗いテッサロニキ駅
テッサロニキ駅発車票。3段目にある、5時50分発の600A列車に乗る。行先はトルコとの国境にほど近いアレクサンドルーポリ(Αλεξανδρούπολη)であるが、発車票では”Αλεξ/πολη”と略されている。なお、最上段にある5時31分の600列車は、アテネから来る夜行列車である。昔はアテネからアレクサンドルーポリまで直通していたものをテッサロニキで分断したため、列車番号が600と600Aになったらしい。
アレクサンドル-ポリ行き
ホームにて発車を待つアレクサンドルーポリ行きの列車。ディーゼル気動車で、両端の先頭車が半室機関室となっている。

早朝、ホテルから駅へ向かう。テッサロニキから乗車するのは5時50分発の600A列車アレクサンドル-ポリ行き。車内はほぼ埋まっており混雑していたが、ほとんどの乗客は数駅で降りた。途中で車掌が検札に来た際に「ストリモナスでバスに乗り換えだから降りろ、ストリモナスだ(意訳)」と言われた。列車内には次駅表示といったものはなく、車内放送も肉声で駅名を言うだけで、聞き取りにくい。頼みの綱のGooglemapも、電波が悪く位置が飛びまくる。ひたすら車窓を見て、駅に停車する度に駅名を探し、地図と照らし合わせ現在位置を探った。

車内
車内、結構ボロい。トイレはあるが穴が空いているだけ、水は手洗い用含め一切出なかった。
ストリモナス駅
ストリモナス駅

地図の感じからしてもうそろそろ到着か、というところで車掌氏が来て、「ストリモナス」と教えてくれた。ありがたい。

8時10分頃、ストリモナス駅に到着。ここで降車したのは私含めて2人だけ。列車のドアを手で押し開け、ステップを降りると、犬が駆け寄ってきた。犬にまとわりつかれてどうしようかと思案していると、駅員に待合室まで誘導された。ここからバスで国境を越え、ブルガリア側の国境駅クラタへ向かうわけであるが、バスの時間まで1時間以上待機である。あまりにも暇すぎたので、駅舎の外で先程の犬を撮ったりして時間を潰していた。

ストリモナス駅の犬 ストリモナス駅の犬

9時30分頃、”Let’s go Kulata!”と言いながら、待合室におっさんが入ってきた。バスが来たらしい。後部のトランクにバックパックを載せ、車内へ。乗客は2人、私と、先程一緒に列車から降りた人のみである。

駅近くから高速道路に乗り10分ほど走ると、国境の検問所に着いた。ここで入国審査官が車内に入ってきて、パスポートのチェックをする。もう1人の乗客はEU市民であったようで、カードを一目見ただけで審査が終わった。一方私はというと、審査官がパスポートのみを回収し、運転手と共に事務所へ行ったため、車内でひたすら待機である。時間かかってるけど大丈夫なんだろうか、と心配していると、運転手がパスポートを持って帰ってきて、車は走り出した。パスポート返却まで少し時間はかかったものの、車内から一歩も出ないまま無事国境を通過できてしまった。コロナでもう少し審査厳しくなってるかと思ったんだけどなぁ……。

バス
ストリモナス(Σταθμός)からクラタ(Кулата)へのバス。ギリシャ文字圏からキリル文字圏に入る。ところで、バスってなんだろう。
パスポートスタンプ
パスポートに捺されたスタンプ、驚きの薄さ。

4.ブルガリア国鉄 クラタ→ソフィア

検問所から5分ほどでクラタ駅に到着、駅前に降ろされた。駅舎に歩いて行こうとすると、運転手から「列車はあっちだ」と、駅の脇の方を指差される。どうやら駅舎を通らずともホームに入れるようだ。ところが、ホーム上をいくら探しても、時刻表や発車票といった類いのものが一切無い。仕方ないので駅構内に居た係員に聞くと、すぐそこに停まっている列車がソフィア行きとのこと。発車までは時間があるはずだけど、扉が開いているしもう乗れるらしい。

クラタ発ソフィア行き列車
ブルガリア国鉄、クラタ発ソフィア行き列車。この機関車、なかなか年季が入っている。
牽引する機関車の銘板、1983年にチェコスロバキアのシュコダ社で作られた機関車であった。
車内
車内はこんな感じ。オープンサロンタイプで3列シート、とても快適である。

クラタ駅には時刻表が無いし、ネットで見た時刻とストリモナス駅に書いてあった時刻は違っていた。列車がいつ発車するのかも分からないまま待っていると、10時50分、何の前触れも無く動き出した。ブルガリア国鉄のサイトに掲載されていた時刻が正しかったらしい。

検札を受けてしばらくまったり車窓を眺めていると、車掌氏が「両替しないか」と持ちかけてきた。チラシ裏にレートを書いて見せてきたがEUR↔BGNのレートなど知らない。とはいえ見た目がぼったくりでもなさそうなので、財布に入っていた€20札を渡して頼んでみる。チラシ裏に何か書いて計算した上で、財布から紙幣やコインを出し、ひとつひとつブルガリア語で説明しながら€20分のブルガリアレフを渡してくれた。優しいけど何言ってるのか分からない。

車窓
車窓。山の中と丘を行ったり来たりという感じ。
車窓
峠越えでは雪の残るところも。

ブルガリアの首都ソフィアは盆地にあり、周囲は山に囲まれている。そのため、鉄道は山をいくつも越えていく。あまり飽きの来ない車窓である。

ソフィア中央駅
ソフィア中央駅に到着した列車

ソフィアに近づくにつれ少しずつ乗客が増えていき、14時半頃、定刻より若干遅れてソフィア中央駅に到着。アテネを発ってから25時間であった。

この後は駅近くに取っておいたホテルにチェックインし、ソフィア観光へ。詳しくはまた別の機会に書きます。きっと。

けみてつ欧州旅20 3日目 カラブリタの狭軌鉄道

在宅勤務で時間に余裕があるので、今年2月下旬に行った旅を少しずつまとめていきたいと思います。第一弾は、ギリシャ・ペロポネソス半島に残る狭軌鉄道に乗った話。

※ペロポネソス半島狭軌鉄道に関しては以下のページが詳しいです。
【ギリシア】ペロポネソス狭軌鉄道 -91%が廃止された究極の廃線跡 – Geek Travel Inc.

2020年2月20日

1.アテネ→ディアコフト

旅の始まりはアテネ駅から。ギリシャ国鉄の長距離列車は座席指定制であり、事前に予約サイトを覗いた際に満席と表示されていたため、期待せずに窓口へ。

「カラブリタ行きたいんだけど」
窓口氏「今日?2分後に列車あるけどそれでいい?」

買えちゃいました。€25.50

アテネ~カラブリタ切符
アテネ駅で発券したカラブリタまでの切符。列車別になっていて、「アテネ→キアト」「キアト→ディアコフト」「ディアコフト→カラブリタ」の3枚をホチキス止め。

「あと1分だよ!7番線に走って!」と窓口氏が急かすので、ホームまでダッシュ。向かいのホームに停車している列車がそれだと思い、連絡通路の階段を駆け降りたところで、ホームの数字が違うことに気付く。我に返って7番線に向かうと、そこは駅舎目の前のホームであった。あんまり走る意味なかったじゃん……。

アテネ駅7番線
アテネ駅からキアト行き郊外鉄道に乗車。

郊外鉄道(Suburban Railway)はアテネ近郊を走る国鉄の列車で、ピレウス~空港、ピレウス~キアト、アノリオシア~空港、アテネ~ハルキダ、各線毎時1本運行している(2020年4月現在、新型コロナウイルスの影響で大幅減便している模様)。

Athens Suburban Railway – TRAINOSE

今回私が乗車したのは、ピレウスからアテネ、コリントスを経由して、キアトへ向かう路線。かつてはアテネのペロポネソス駅からペロポネソス半島方面へ向かう狭軌鉄道路線網があったそうだが、現在はほぼ全て廃線となっている。このうち一部区間については代替となる標準軌新線を建設しており、2020年時点でキアトまで工事が完了している。郊外鉄道として営業しているこの区間は、全線複線電化の高規格路線。海沿いを走り、景色はよい。

キアト行き車窓
アテネ~キアトの車窓。狭軌鉄道時代の旧線と並行している。
コリントス運河
コリントス駅手前でコリントス運河を渡る(動画から切り出し)。
郊外鉄道の車内
郊外鉄道の車内。コリントスを過ぎると客もまばら。
キアト駅に到着した列車
キアト駅に到着した列車。通過線のある2面2線の駅だが、使用しているのはこの1線のみ。コリントス駅からキアト駅まで片側の線路しか使っておらず、1つの閉塞になっている様子。
パトラ行き代行バス
キアト駅前からパトラ行き代行バスに乗車。

アテネ駅からキアト駅までは1時間20分ほど。ここから先、パトラ方面の鉄道は改軌工事中のため、ここで代行バスに乗り換える必要がある。バス乗り場は駅前だが、他の乗客もみな乗り換えるので、ついて行けばすぐ分かった。
なお、キアト~パトラ間の代行バスは2時間に1本出ているが、このうち1日3本のみ、カラブリタへ行く路線の出発点であるディアコフトを経由する。今回乗車したのはこのうちの1本。キアト駅近くのICから高速道路に入り、線形のよい道をかっ飛ばしていく。って、こんなに良い道路があるんじゃ鉄道勝ち目無くないか。

こうしてアテネから2時間半ほどかけて到着したディアコフトは、コリントス湾に面する小さな町。駅周辺はカラブリタ行きの線路しか無く、元々の狭軌鉄道線路らしきものは見つけられなかった。

ディアコフトの海岸
ディアコフトの海岸。

2.ディアコフト-カラブリタ鉄道

ディアコフト-カラブリタ鉄道は、海沿いの町ディアコフトから山の中にあるカラブリタまで22km、高低差720mを結ぶ鉄道で、最急勾配は17.5%。軌間750mmのナローゲージである。

Diakofto–Kalavryta Railway – Wikipedia

時刻表
ディアコフト駅に掲示されていた時刻表。

平日は3往復、土休日は5往復設定されており、所要時間はおよそ1時間ほどである。運賃は€9.50。列車は3両編成で、中央部にディーゼル機関の収められたスペースがある。座席は1番から138番まで、全138席?

ディアコフト駅
ディアコフト駅に停車中のカラブリタ行き列車。

列車発車時刻は11時30分であったが、時刻を過ぎてから列車が到着、一旦車庫に引き上げた後、10分ほど遅れて発車した。
この列車、予約サイトで満席になっていただけあって、とても混んでいた。どうやら若い団体客が乗車していたよう。割り当てられた座席はドア横の補助座席、あまり写真を撮る余裕が無かったので、車窓は帰りに。

カラブリタ行き車内
カラブリタ行き列車、満席の車内。
カラブリタ駅
カラブリタ駅に到着した列車。

12時40分頃、カラブリタ駅到着。カラブリタは険しい山の奥にある小さな町であり、あまりの険しさ故、第二次世界大戦時にはパルチザンの拠点であるとして、ドイツ軍による住人の虐殺が行われたという。

カラブリタホロコースト博物館
カラブリタホロコースト博物館。

帰りの列車の時間まで3時間弱あったが、この虐殺に関する展示を行っている博物館とレストラン、あとは駅周辺をぶらぶらして時間を潰した。正直なところ、あまり見るものは無い。雨が降った止んだり、という天気であり、駅で雨宿りをした時間も長かったが。

3.帰路

15時頃、駅の旅行センターに職員のお兄さんが来て、切符の発売が始まった。ここでアテネまでの帰りの切符を購入。今度はレシートタイプではなく、地紋の入ったちゃんとした(?)切符。

カラブリタからの切符
カラブリタからアテネまでの切符。
帰り列車の車内
帰り列車の車内、誰も居ない。

帰りは団体客がおらず、車内は空いていた。座席指定は端から順に指定しているようで、全員が最前部の車両に乗っていたため、誰も居ない後ろの車両に移動。出発前に一通り検札した後、同じ車両に乗ってきた車掌氏が誰も居ない座席で横になっているのを眺めつつ、最後部からの眺めを一人占め。以下写真。

車窓1
ラックレール区間、急勾配がはっきりと分かる。
車窓2
途中駅に停車したところ。列車交換ができるようになっているが、平日は1本の列車が行ったり来たり。交換設備を使うのは本数の増える土休日のみ?
谷に沿って走る。崖を掘って線路を敷いた区間であるようで、頭上に岩がせり出してきている。

下りも上りと同じく、所要時間は1時間ほど。16時30分、定刻より10分ほど早くディアコフト駅到着。あれ?なんで早着してんの?

ディアコフトは先程も述べたように、海沿いの小さな町。はっきり言って、カラブリタ以上に何も無い。キアト行き代行バスが来るまで、駅付近に留め置かれている旧型車を見て時間を潰していた。

ディアコフト駅横の蒸気機関車
ディアコフト駅横に蒸気機関車が保存されていた。
保、存……?? ディアコフト駅ホームの先、線路が途切れる手前に留置されていた旧型車。

定刻から10分ほど遅れて代行バス到着、キアトまで乗車。雨上がりのおかげか、道中虹が見えるところもあった。なお、キアト駅から先は工事中と述べたが、路盤が完成しレールが敷かれ、更に信号まで設置されている様子が車窓から確認できた。架線こそ無かったが、郊外鉄道の延伸も近いのかもしれない。

高速道路区間の車窓
帰りに撮影した、高速道路区間の車窓。建設中の新線が見える。

キアト到着後は郊外鉄道に乗り換え、19時過ぎにアテネ駅着。アテネ駅前のホテルに宿泊。日が暮れて車窓も見えないし、特に語ることは無い。1時間に1本の割には人乗ってますね、というくらい。

 

ディアコフト-カラブリタ鉄道編はここまで。

この翌日、アテネからソフィアまでの鉄道旅はこちら